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Abu Garcia # 001

歴史と理念、そして今を語る

その歴史は古く、スウェーデンで産声を上げてから、今年で創業100年を迎える老舗釣具メーカー。
丸型リールを代名詞としながらも、ロープロモデル、トーナメントロッドなど、近代のバスフィッシングにもしっかりとフィットする。
そして近年、ソルトウォーターの世界でも名を博すなどシェアを広げ、更にはアパレル業界でもその名を轟かせ、めざましい躍進と成長を遂げている。
今回はその歴史を紐解いていくと同時に、アブガルシアの今を現日本の代理店であるピュア・フィッシング・ジャパンの田中氏、東氏に話をうかがった。

■懐中時計、タクシーメーター製造から転身■

1921年、スウェーデンのスヴァングスタで創業されたアブ。
創業者のカール=アウグスト・ボルイストレム(Carl-August Borgström)の頭文字であるABと、時計工場を意味するUrfabrikenを合わせて、「ABU」と名付けた。
創業当時は懐中時計、電話度数計の製造会社であった。
そこからタクシーメーターの製造を始め、創業者のカール死後、息子であるイエテが事業を引き継いだ。
時は1939年、第二次世界大戦が勃発。
戦争による交通規制が始まり、タクシーメーターの需要はなくなり、窮地に陥る。
そこで元々釣り好きだったイエテの手により、1941年に釣具メーカーへと生まれ変わることとなる。
後に世界中のアングラーを魅了するアブガルシアの一歩は、時代の変化が生み出した産物といえる。

■スウェーデン王室御用達■

アブガルシア=スウェーデン王室御用達。
皆、そのイメージは強い。
しかし、何故王室が?

〉東氏(以下、東)
実は当時のスウェーデンでは釣りだけではなく、どれだけ遠くに釣りの仕掛けを飛ばせるかという競技があったんです。
その競技で一番遠くまで飛ばせたリールがアブでした。
そこから王族の目にとまり、そんな素晴らしいリールは王室御用達にしようではないか!
というところから、アブがスウェーデン王室御用達になったんです。

アメリカは狩り、ヨーロッパは王族の嗜み。
特にトラウトはそんなイメージが強かったが、国によって文化の違いにより、新たな文化が生まれ派生を繰り返す。
アブはそういった意味では、あらゆる時代背景に沿いつつ、その独自の立ち位置を確立していったことがうかがえる。

■時代と共に歩んだプロダクト■

Abu Garcia=丸型リール
そんなイメージが強いが、実は時代によって今もなお時代にアジャストしている。
80年代はウルトラマグや1000C、近年はRevoシリーズなどロープロモデルも展開している。

〉東
アブガルシアは、1979年にアメリカのガルシア社(アブの全米での販売権を取得していた会社)が倒産し、アブが吸収合併して今のアブガルシアになりました。
バスフィッシングの本場はアメリカ。
スウェーデンメイドの丸型は残しつつ、アメリカの需要の主流はロープロなので、必然の流れとしてロープロの開発が進んでいるんです。
しかし、アブガルシアが特殊な立ち位置なのはクラシックなイメージが崩れず、丸型のイメージを残しつつ、現代の道も歩めている稀有な存在だと思います。

古いイメージと新しいイメージの共存。
奇跡のバランスともいえるのは、ブランディングということだけではなく、やはり世界中で愛されたプロダクトを生み出せたことに尽きるのであろう。

■ロッドとしての顔と開発者の心遣い■

ここ最近アブガルシアが賑わせているのがロッド。
アブガルシアがロッド?
いやいや、アブガルシアといえばファンタジスタがあり、バスフィッシング界に名を轟かせている。
そして、ファンタジスタに追随するように生まれた「Versart」「ZoomSafari」がある。
しかし、従来のトッププロのトーナメントを支えたアイテム達とは立ち位置が異なる。
そこを詳しく聞いてみた。

〉東
2種類ともピーキーには作っていないんです。
ある一定の環境で200点を叩き出せるのがトーナメントロッドたち。
ただその一定の環境を除けば、30点になる可能性がある。
エンドユーザーが欲しいのは、野池、ダム、川などあらゆる環境にマッチ出来るロッド。
それを3年の歳月をかけて、全国のエンドユーザーにもテスターとして参加してもらって作り上げたのが「Versart」なんです。
もちろんプロテスターも参加していますが、僕らが知りたかったのはフィールドに出ている一般アングラーの声だったんです。
ハイエンドタックルを持っている人から、Versartクラスのプライスレンジのタックルを使っている方まで幅広い方々に声を掛けて、ありとあらゆる情報をかき集めました。
ルアーもその方々が使っているもの。
僕らが欲しかったのは”リアル”だったんです。

ユーザビリティ―を大切に。
お客様に添い遂げる開発者の心遣い。
こんなところにも人気になる片鱗を見た気がする。

■クラシックの継承■

Versartのトーナメントロッドを彷彿とさせる表情とは異なるのが、クラシックな雰囲気をまとった「ZoomSafari」
アブガルシアの歴史には、過去にも「Zoom」「Safari」の名を持ったロッドが存在する。
先人達の偉業を継承するかの様に名付けられた本作。
どこか懐かしいそのイメージを田中氏にうかがった。

〉田中氏(以下、田中)
ストリートスタイルにマッチするような、黒くソリッドな表情を持つVersart。
そことは考えが違うんですが、フィッシングという括りから、アウトドアユーザーに届くように作られたのがZoomSafariなんです。
エントリーモデルでもあり、古くからのクラシックなアブガルシアファンが反応してしまうのがこちら。
みんながイメージする丸型リールを合わせるスタイルにもマッチします。
短いタイプになればお子さんが使えたりと、キャンプに行った先で楽しめたりも出来ます。
安いセットロッドを使うのではなく、所有感を満たし、なおかつ釣り場で映えるようなロッド。
コストパフォーマンスがいいだけではないことが、ZoomSafariの強みなんです

あらゆる時代の層まで取り込むアブガルシアの器。
今も昔も確かなプロダクトをアウトプットしてきた実績に伴う、ブランドの底力を感じた。

あらゆる時代の層まで取り込むアブガルシアの器。
今も昔も確かなプロダクトをアウトプットしてきた実績に伴う、ブランドの底力を感じた。

あらゆる時代の層まで取り込むアブガルシアの器。
今も昔も確かなプロダクトをアウトプットしてきた実績に伴う、ブランドの底力を感じた。

■アパレルへの参入と産物■

近年「Abu Garcia」のロゴをまとったウェアを街中でよく見かける。
男性だけかと思いきや、女性まで。
参入のきっかけや影響についてうかがった。

〉田中
アブガルシアは総合メーカーであり、元々展開はありました。
しかし近年、釣りは一つのカルチャーとして受け入れてもらえるようになりました。
特にファッションの方々に支持され、若い層がキッカケとなり、そこから釣りを始めてくれるケースも増えています。
そして、近年アパレルブランドとのコラボレーションもしていますが、そこでとても面白いことが起きているんです。
コラボレーションの際にデザイナーさんと話すと、まず僕らでは考えつかない発想が出て来るんです。
それは可能不可能ではなく、これ面白くない?と。
釣り業界でのセオリーを破ってくれるので、僕らもこの仕様は可能なのか?など工場に確認を取ることが増えました。
そこで実現させたものは、自分たちの経験にもなり、可能と言う名の新たな選択肢を生みます。
それが自分たちのプロダクトにも反映され、エッジのきいたデザインが生まれ、ユーザーの所有感を満たすプロダクトに繋がるわけです。

どうしても古い体質のイメージがある釣り業界。
そこに壁はなかったのだろうか?

〉田中
僕自身も元々アパレル業界にいました。
東はオーディオ機器の商品企画など、二人とも釣りとは関係のない業界にいたんです。
勿論、元々釣りが好きで入社しましたが、全く違う業界にいたからこそ発想も人間関係も異なります。
だからこそ、別視点でアイデアを出せたりするので、良い意味でも悪い意味でもこね回してる感はありますね(笑)

■未来に見るもの■

今年で100周年を迎え、釣り具だけにとどまらず様々な挑戦をするアブガルシア。
更なる挑戦はあるのか?
そして、アブガルシアの今目指すものは?

〉田中
今後、服とギアの両軸でコラボレーションなども随時考えています。
ただ勘違いして欲しくないのは、ビジネスライクにコラボレーションで話題を作っているわけではないんです。
むしろ、ビジネスのことだけ考えていれば、釣り具だけに注力していた方がいいかもしれません。
ただアブガルシアは、お客様とのコミュニケーションを大切にし、何を求められて、何を提案出来るかを模索していかなければならない。
その根底にあるのは”面白い”と思えると感情なんです。
そこがブレないアブガルシアは、もっと面白い挑戦をしていくと思いますよ!

人はゆとりがなければ、面白いことが考えつかない。
楽しいという経験がなければ、次へ踏み出せない。

アブガルシアはその歴史の深さゆえに、葛藤も多いはず。
しかし、その葛藤さえも飲みこんで、挑戦に変えていっている。

“釣り”という古来より存在し、今もまた再燃しているカルチャー。
アブガルシアに出来ること。
その形は私たちの手に届き、そして心に届き、フィールドに刻まれていく。

アブガルシアという一つのカルチャーに触れた今回。
きっと次にフィールドに出る時、アブガルシアを手にしているだろう。
そして、新たな出会いを求めて水辺、街に繰り出していく姿が目に浮かぶ。

アブガルシアは無限の可能性を秘め、今もなお成長をし続ける怪物であった。

 

<INTERVIEW & TEXT>  TAKAHIRO KUDOSE (TEENY RANCH)

<PHOTOGRAPHY >     TADASHI MOCHIZUKI