PEOPLE

DAIWAの今

釣り具メーカーである「DAIWA」がここ数年、新たな時代を切り開いている。
「D-VEC」というプレミアムブランドを生み出し、東京のファッションウィークに風穴を開けたのは記憶に新しい。
そして、近年の「DAIWA PIER39」。
今、ストリートを中心とした若者はもちろん、ファッションを知り尽くした大人までも取り込み、ファッション業界を席捲している。
息継ぎなく攻めたスタイルを見せるDAIWA。
その中心人物である小林氏、内海氏にDAIWAの"今"を聞いた。

■D-VEC

2009年に始動した、DAIWAのアパレル強化プロジェクト。
その中で生まれた「D-VEC」。
2017AWより東京コレクションへも参加し、従来の釣り具メーカーが踏み出さなかった領域に踏み込んだ。
その始まり、そして改めてブランドの姿勢を聞いた。

過去幾度となくお話をされているかと思いますが、D-VECのはじまりをおうかがいさせてください。

 

〉小林氏(以下、小林)

2009年に50周年を迎えたDAIWA(当時はダイワ精工)が、次の100周年を目指すにあたり、佐藤可士和さんに相談し、企業としての刷新を図ろうという動きがありました。
そのタイミングで社名ごと変更し、「グローブライド」として生まれ変わりました。
肝心のDAIWAはブランド名として残し、次の時代への歩みを始めました。
ロゴも変わり、新たに生まれた「D」のロゴを広げようとしました。
DAIWAを知ってもらうキッカケとしては、アパレルがいいねとなり、当時は釣りの服=ダサいという風潮が強くあり、ここに何か出来ないかと考えたんです。
そこで当時、私と佐藤可士和さん、有名なスタイリストさんと3人で、かっこいい釣りの服を作ろう!と意気込み、アパレルの強化プロジェクトが本格的にスタートしたことがベースにありました。



当時、販路も釣り具ブランドが着手しなかった領域、やコラボレーションの発表など、かなり先を行っているイメージでした。

〉小林

当時はZOZOTOWNや、A BATHING APEとのコラボレーションなど、見てもらう・気付いてもらうことを大事にしていました。
しかし、その翌年に東日本大震災があり、釣りどころではないとなり、2~3年はブランドとしても停滞せざるを得ませんでした。
時は経ち、2015年に再強化するという動きが社内に上がり、D-VECは第二次ステージとしての動きを始めたんです。
そして当時の社長から、ありふれたアパレルブランドではなく、一気に人が振り向くようなプレミアムブランドに引き上げてくれという課題が下りてきました。
釣り具メーカーからアウトドアブランドとして認知、そしてそこからファッションブランドへという道では遅すぎるし、誰もが踏む轍だと思ったんです。
それよりは一気にメゾンまでは行かないまでも、一気に違うステージに踏み込んでいくことにしようとなり、東京コレクションやピッティへの参加など、釣り人にアプローチだけではなく、より外の世界に目を向けての戦略を始めました。
そして、当時社内ではこのプレミアムダイワブランドのことを、DAIWAのDを取って、「ディーベック」と呼んでいたんです。
名前を決めようとなった時に、社内の通称であるディーベックをそのまま採用し、「D-VEC」というブランドが生まれたんです。

 

■DAIWA PIER39

「大自然」と「都会をシームレスに繋ぐ架け橋」という考えを提案し、都市生活を満喫するためのデザインと、フィッシングを楽しむためのアイディアが共存するアパレルコレクションとして2020年に生まれた。
BEAMSが監修したことでも、ファッション業界の注目度が高まった。
EC開設と同時に完売、ショップでは行列と話題に事欠かさないモンスターブランドの印象を受ける。
こちらも、その始まりと今を聞いた。



BEAMSの監修という、また新たな角度で世間を賑わせた印象でした。
協業に至った経緯は何だったんでしょうか?


〉小林

D-VECの東京コレクション発表など様々な活動を通し、セレクトショップなど釣り具店様以外からも声が掛かるようになりました。
その頃ビームスさんが「他社の商品を監修しブランドを確立させる」新しいビジネスを立ち上げ、偶然にもお互いを知ることとなり、両社の強みを活かしたビジネスモデルとしてDAIWA PIER39がスタートしました

D-VECはモードやハイブランドを意識した位置づけ、DAIWA PIER39はBEAMSさんが得意とするストリートカジュアルなど、D-VECとはまた違うファッション層や年齢層を獲得するテイストのブランドとして生まれたんです。
リテールを中心とするD-VECに比べ、ホールセールを中心に展開するDAIWA PIER39というのも大きな違いだったりしますね。



プロダクトとしてのバッティングはあったりするんでしょうか?

〉小林

ファンクションという部分では通ずる部分があると思うのですが、根本的にはD-VECはメンズはセットアップ、レディースはドレスのキレイめな印象で、DAIWA PIER39はビッグシルエットなどストリート意識なので、被るといったことはほぼないですね。
それに伴い、取扱店も違うので、差別化は図れていると思います。

 

 

■ある種の異端児としてのDAIWA

2つのブランドが織りなす、圧倒的な先駆者のイメージを築かれているかと思います。
釣り具業界内での反応はどうなんでしょうか?


〉小林

そこは思ったよりないんですね(笑)
ファッションメディアの方々がたくさん取材をしてくれるのに対し、そこは業界的にも釣りということに傾倒しているので、あまり反応がないのが正直です。
ただ、表参道ヒルズのショップなどでお客様の動向を見ていると、釣り人の方が「あれ?DAIWAのDだ!こんなオシャレな洋服を作っているんですね!」と買ってくださる光景を見たりします。



今は昔より釣り人がオシャレになっている印象です。
ヨーロッパでのフライフィッシングなど、崇高な遊びのイメージはありますし、街でも外でも使えるというのはより主流になっていきそうですね。

〉小林

丁寧に作り上げたブランドたちです。
フィールドの需要も考えながら、より釣りもファッションも2ブランドを通して楽しんでいただきたいですね。

■コンセプトを大切にしたD-VECのプロダクト

釣り具ブランドがベースである故、そこはプロダクトが釣りに通ずるものなのか?
躍進を続けるブランドのこだわりを聞いた。


〉内海氏(以下、内海)

全てが釣りに通ずるというよりは、必然的に求められるファンクションの部分に注視しています。
ファンクションといっても、単純にストレッチが効いてます、撥水しますということでもなく、その生活における「快適さ」を意識しています。
オーバースペックなものを作ろうというわけではなく、生活ごとにおいて、何が必要なのかというミニマルな考えでプロダクトを構築しています。



ついつい語りに走ってしまう人の意識。
足し算をしてしまいがちですが、考えがミニマルというのはハッとしました。

〉内海

スポーツブランド、アウトドアブランドがやりがちな、機能合戦ということではないんですね。
メンズはセットアップ、レディースはドレスという根本のカテゴリーがあるからこそ、その中で出来る最大であり、斬新なこととは?ということを常に追いかけていますね。
ただそれが一番難しいなと、日々頭を悩ませてますね(笑)

 

 

■ショーの裏側

プレミアムブランドとして、一気に飛躍したアプローチを仕掛けたD-VEC。
ファンクションショーという選択肢に至った経緯を聞いた。


>小林

最初は原宿のキャットストリートのオープニングにあたり、何か仕掛けをということでショーをやったんですね。
キャットストリートをジャックし、実行にまで至ったんですね。
実は以前、大阪で釣り具店様を対象にショーをやったことがあったんですね。
当時一か月前に急遽やるぞとなり、様々なショーを見たりして勉強し、怒涛の中でショーを決行したことがあります。
思えば、あれが一つのベースになりましたね(笑)



小林さんがショーに奮闘している姿は一見想像出来ないですが、本当に努力家であり、向上心の高さに頭が上がりません。
何度かデザイナーの交代などもあったかと思うのですが、小林さん自身がデザイナーに求めることはなんでしょうか?

 

小林さんがショーに奮闘している姿は一見想像出来ないですが、本当に努力家であり、向上心の高さに頭が上がりません。
何度かデザイナーの交代などもあったかと思うのですが、小林さん自身がデザイナーに求めることはなんでしょうか?

〉小林

やはり緊張感ですね。
交代の転機ももちろんありますが、マンネリは良くないと思っています。
釣りというものがベースにあると、単純な発想ではダメだと思っています。
釣りに寄っても、ファッションに寄りすぎてもダメですしね。
常に新しいことや表現を求めているのも事実です。


とはいえ、デザイナーとは一筋縄ではいかなこともありますか?

〉小林

私自身も釣り一筋で来たので、最初は結構悩みましたね(笑)
デザイナーとしての踏み込めない領域があるんですね。
そこを踏み込むことは出来ないなど、具体的には言えないのですが、感覚の違いを感じることは多いですね。
でも今回のショーもですが、オーバーサイズのものもあれば、モードなアイテムも散りばめられています。
そして、機能素材のシェルから釣り用のベストまで、様々なミックスした世界を表現しました。
D-VECというブランドをありきたりなペルソナに当てはめることなく、みんなが着慣らしたものを着たい人、いやいや新しいものが欲しいんだよ!という人、全ての人に提案を心がけています。
なので、デザイナーには臆することなく表現をして欲しいですね。
こういうとコンサルの人たちとよくぶつかるのですが、ありきたりなやり方を踏襲するよりも、常に人々の裏をかきたいと思っています。
我々が目指しているのは、いかに既存に当てはめないか。
それは私が釣りの世界にいて、ファッションの固定概念がないからかもしれません。
しかし、そこにこそ答えがあると思いながら、常に模索と進化をしていきたいですね。



デザイナーに臆することなく、泣いて喜びそうなデザイナーがたくさんいそうです(笑)
DAIWA PIER39もショーなどの予定があるんでしょうか?

>小林

DAIWA PIER39はあくまでストリート意識なので、そこは現時点では相性の部分も含めて考えていないですね。
時代が進めばということもあるかもしれませんが、差別化の意味でも、それぞれの領域を大事にする意味でもそこは考えずにしています。

 

■更なる仕掛け

D-VEC、DAIWA PIER39、続いて始動したDAIWA LIFESTYLE。
釣り


>小林

このプロジェクトはブランドではなく、DAIWAの生活に釣りがあるということを軸に置いた考えのようなものでもあります。
ロゴの主張を抑え、街にも自然にも馴染むようにアースカラーを中心に作られています。
ここでも生活における快適さを大事にしており、得意とする機能性は備えたままになっています。



コラボレーションなどもありますね。

>小林

DANNER社とのコラボレーションが目新しいですね。
リバーウォークというDANNERが水の中に入るように作っていたモデルが原型で、本家はフェルトソールなのに対し、こちらはビブラムソールを装備しています。
フィールドでも街でもという、コンセプトを活かしたコラボレーションです。
意外にもローカットが人気で、タウンユース需要を感じましたね。

 

印象的なシェルジャケットなど、2つのブランドとはまた違いますね。

>小林

クレイジーパターンのGORE-TEXジャケットです。
生産背景も弊社で作っており、以前からGORE-TEXを多用してきた経緯もあり、こういった面白い試みが出来るんです。
価格もこちらで¥42,900(税込)など、コストパフォーマンスが高いことも特徴です。
手に届くことも大事。
全ての方とまでは難しいかもしれませんが、生活の中にいつもDAIWAがあるということを目指していきたいですね。

 

驚異のブランド力を築き上げたDAIWA。
ただそこには本来の「釣り」という軸が常にあり、その中で様々な実験を繰り返している。
コロナウイルスにより、大きく変わった人々の生活様式。
街での快適さ、自然の中での快適さ。
その快適さの先には、人々の心に余裕を生み、それが豊かさに繋がっていく。

ハイ、ミドル、ロー。
DAIWAが描くスタイルはそんな単純なことではなく、全ての人々を包み込み、きっとよりDAIWAの洋服をあらゆるフィールドで見かけることだろう。
そして、その光景が広がることを確信した。

 

-DAIWA-
https://www.daiwa.com/jp/

-D-VEC-
https://d-vec.jp/

-DAIWA PIER39-
https://daiwapier39.jp/

-DAIWA LIFESTYLE-
https://www.daiwa.com/jp/lifestyle/index.html

 

 

< Photography > Tadashi Mochizuki

< Interview & Text > Takahiro Kudose(TEENY RANCH)